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CreerのAI活用は、今どこまで来たのか ― 代表個人の経験を会社の能力へ変える途中

中小企業のAI導入状況や国土交通省の通知と照らしながら、Creerの現在地を整理します。個人の試行錯誤を会社の能力へ変えるには何が必要なのかを考えました。

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この4本シリーズの第1回では、全社員へChatGPT Businessを広げてみることを、第2回では、自分の仕事のどこでAIを使えるのかを考えました。第3回では、AIとの仕事で生まれた経験を会社の記憶として残せないか、というところまで話が進みました。

最初から、この流れを一つの計画として考えていたわけではありません。

全員がAIを使える環境を用意しようとすると、次に「どこで使うのか」が問題になる。実際に使うなら、調べたことや間違えたことをチャットの中だけに残してよいのか、という問題も出てくる。

そうして記事を書いていた頃、仕事で2026年時点の生成AI導入・定着事例を詳しく調べる機会がありました。他社がどのように社員へ広げ、どこで停滞し、何を効果として見ているのかを調べるうちに、逆に気になってきました。

では、Creerは今どの辺にいるのだろう。

第4回となる今回は、外の動きと照らしながら、自分たちの現在地を考えてみます。

「導入したか」だけでは測りにくくなってきた

中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査では、AIを「全社的に導入している」企業は3.6%、「一部の業務で導入している」企業は16.8%で、合わせて20.4%でした。

業種別では、建設業が15.9%、建設コンサルタントも含まれる「学術研究、専門・技術サービス業」が36.9%となっています。

この数字だけを見れば、Google WorkspaceのGeminiを社員が使え、さらにChatGPT Businessを全社員へ広げようとしているCreerは、中小企業の中では比較的早い側にいるのかもしれません。

一方、PwCの「生成AIに関する実態調査2026 春」では、日本企業の生成AI活用・推進度は87%に達しています。しかし、「期待を大きく上回る効果」を出している企業は9%でした。

こちらは売上高500億円以上の企業・組織に勤める課長職以上を対象とした調査です。調査対象も質問内容も中小企業基盤整備機構の調査とは異なるため、数字をそのまま比べることはできません。

それでも、大企業ではすでに、競争軸が「導入したか」から「何を変えられたか」へ移っていることは感じます。

全員へ配った後に、何が起きるか

今回調べた企業では、Gemini、Microsoft 365 Copilotなど、使っているAIはさまざまでした。公開事例は成功した取り組みが表に出やすいため、削減時間の数字そのものより、どのように定着させたのかを見るようにしました。

そこで見えてきたのは、小さく試し、実際の業務で使い、社員自身の事例を共有し、時間だけでなく品質や業務成果も確認しながら、うまくいった使い方を次へ広げる流れです。

反対に、全員へライセンスを配って終わる。「AIを使ってください」と伝えるだけ。一般的な研修を一度行って終わる。利用人数だけを見て、仕事が変わったかを見ない。それでは定着しにくいのだろうと思います。

Creerは小さな会社です。大企業のように、まず20人で試してから100人へ広げるような段階展開はできません。逆にいえば、全社員へ環境を渡して試すこと自体が、小規模な実証に近いとも考えられます。

大事なのは、全員へ配ったことではなく、その後に何が起きるかです。

失敗も含めて、かなり試してきた

CreerでのAI活用を振り返ると、文章作成や要約だけをしてきたわけではありません。

  • 技術基準を調べる
  • 数量計算を別の方法から確認する
  • 図面をAIに読ませてみる
  • DXFを処理する
  • Excelやスクリプトを作る
  • 社員への説明や技術判断を整理する
  • 音声を記録し、知識として残す
  • 会社の経営についてAIと考える

AIを使った小さなサービスも作ってみました。

当然、うまくいったものばかりではありません。AIがもっともらしく間違えたことも、図面を読ませれば自動でチェックできるほど単純ではないと分かったこともあります。自動化しようとして、かえって手間や費用が増えたこともありました。

録音を残せば会社の知識になると思っていましたが、記録と再利用できる知識は別物でした。

こうした失敗を通じて、今は、AIに正解を決めてもらうのではなく、人間が判断するための確認ルートを増やす道具として使うという考え方が中心になっています。

Markdownを使う方向が、国の動きとも重なった

前回の記事では、社員がAIと仕事をして分かったことを、context.mdのようなMarkdownファイルとして案件側へ残せないかと書きました。

ただ、私自身は以前から、経営、技術、社員教育などの判断や前提を複数のMarkdownファイルへ分けて残してきました。AIのチャットだけに前提を預けず、必要なときにもう一度読み込ませ、そこから続きを考えられるようにするためです。

最近考え始めたのは、Markdownを使うことそのものではなく、この方法を社員自身の仕事にも広げられないか、ということでした。

ちょうどその頃、国土交通省が2026年7月29日付で出した「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について」という通知を知りました。関東地方整備局の公開資料から、通知、計画書のひな形などを確認できます。

通知では、日常業務や設計業務での積極的な生成AI活用を求める一方、機密性の高い行政情報や個人情報をクラウド型AIへ無秩序に入力することへの注意も示されています。

また、生成AIを使って報告書や設計成果などをとりまとめる場合の「生成AI利活用計画書」には、利用目的や範囲、使用するサービス、対象データに加え、入力データを学習に使わせないための措置、履歴の保存方法、情報漏えい対策、誤情報を確認する体制などを記載する形になっています。

さらに通知には、将来のAIによる知識活用、検索、分析を見据え、成果物の構造化と機械可読性を高めることが重要だと書かれています。特記仕様書の記載例では、見出しや章立て、図表の説明を整えることに加え、報告書の要旨、目次、結論などをMarkdown等でまとめること、可能な範囲でCSVやJSONなどの元データを提供することも示されています。

すべての成果品をMarkdownで納品する、という話ではありません。それでも、人が読んで終わるだけでなく、将来AIでも検索・解析しやすい形で情報を残そうという方向は、建設コンサルタント業界にとって大きな変化だと思います。

Creerが考えていた数人の会社の仕事の記憶と、国土交通省が考える成果物の仕組みは、目的も規模も違います。ただ、人にも読めて、後から機械にも扱いやすい形で情報を残すという方向は、偶然重なっていました。

進んでいる部分と、これからの部分

ここまで書くと、Creerはかなり進んでいるようにも見えます。しかし、自分ではそこまで単純には考えていません。

私個人のAI利用だけを見れば、設計、確認、社員教育、経営、ナレッジ化、自動化など、かなり多くのことを試してきました。失敗も経験し、それを技術ノートや社内の知識として残すところまでは来ています。

一方、会社として見れば、まだこれからです。

  • 全社員が自分の仕事からAIの使いどころを見つけられるか
  • 社員自身が得た知識を会社へ戻せるか
  • その知識を別の社員が使えるか
  • AIによって時間、手戻り、確認方法、品質がどう変わったか
  • それによって仕事の流れそのものが変わるか

こうしたことは、まだ十分に確かめられていません。大企業のように、AIエージェントや大規模な社内データ基盤を業務へ組み込んでいるわけでもありません。

だから、Creerを単純に「AI先進企業」と呼ぶのは少し違う気がします。

代表個人の経験を、会社の能力へ変える途中

今回、他社事例や国の動きと照らしてみて、今のCreerを表すなら、これが一番近いと思いました。

代表個人のAI活用を、会社の能力へ変えようとしている途中。

最初は、AIを使える社員が増えればよいと思っていました。しかし、それだけでは仕事は変わりません。

自分の仕事のどこでAIを使うのかを考える。AIと仕事をする中で得た経験を残す。次の仕事や別の社員がそれを使い、また新しい経験が会社へ戻る。

この循環が回り始めれば、「AIを導入した」という話から少し違うものになってきます。会社そのものが、仕事をするたびに少しずつ学べるようになるからです。

Creerは、そこまで到達した会社ではありません。ただ、自分たちの現在地を外から測ってみると、その入口には立っているのかもしれません。

これから確かめたいのは、AIを何回使ったかではありません。

AIとの仕事によって社員の仕事が変わり、その経験が会社に残り、次の仕事が少し良くなるか。

そこまでいけば、AIは単なる便利な道具ではなく、会社が学び続ける仕組みの一部になるのだと思います。


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