AIは使える。でも、この仕事のどこで使えばいい?――CAD作図・数量計算・チェック作業から考える
AIの機能を知っていても、CAD作図や数量計算のどこで使えばよいかは分かりにくい。実際の仕事から、調査・比較・確認にAIを使う場所を見つける考え方を整理します。
この4本シリーズの第1回では、Geminiが使える環境に加えて、ChatGPT Businessを全社員へ広げてみる理由を書きました。
第2回となる今回は、環境を用意した後、社員が実際の仕事のどこでAIを使うのかを考えます。
Creerでは以前から、社員がGeminiを使える環境を用意しています。私がAIを使いながら考えてきたことも技術ノートとして残し、社員には一通り読んでもらっています。個人でChatGPTなどを使っている社員もいます。
社員がAIそのものを知らないわけではありません。
それでも最近、話をしていて感じることがあります。
「AIで何ができるか」は何となく分かっていても、今、自分がやっているこの仕事のどこで使えばよいのかが分からない。
実際の壁は、そこなのかもしれません。
今の社員の仕事
現在、Creerで社員に任せている仕事の中心は、CAD作図、数量計算、資料作成などです。
発注者と直接やり取りをして設計条件を決めたり、設計者として最終的な判断をしたりするところまでは、まだ任せていません。私の仕事を支えながら、少しずつできる範囲を広げている段階です。
ただし、単純に指示されたものを作るだけではありません。
- 過去資料から、今回と似た条件の事例を探す
- 数量算出要領や土木工事積算基準を確認する
- 作った数式が第三者にも分かりやすいかを見る
- 決められたルールに沿っているかを確認する
- 別の方法でも同じ結果になるかを確かめる
こうした前後の作業も含めて、一つの仕事です。
「作る」以外にもAIを使える
AIというと、文章や資料を作らせる、何かを生成させる、といった使い方が最初に思い浮かびます。もちろん、それも便利です。
でも、社員が実際に行っている仕事を見ると、AIを使える可能性があるのは作成部分だけではありません。
過去資料から似た条件を探す。基準類から該当する記述を探す。数式の意味を説明させる。作ったものとルールを照合する。別の確認方法がないか考える。
AIに正解を決めてもらうのではなく、人が作業や判断をするための材料を探したり、確認したりする部分を手伝ってもらう。
今の社員の仕事には、こちらの使い方の方が入りやすい場面も多いと思っています。
チェックでは、できるだけ違う方法を使う
Creerでは以前から、チェックするときには、できるだけ作成時とは異なる方法で確認するようにしています。
例えば、ある方法で数量を拾い、まったく同じ方法でもう一度拾えば、単純な計算ミスには気付くかもしれません。ただし、拾い方そのものが間違っていれば、同じ間違いを繰り返す可能性があります。
だから可能であれば、別の方法で計算する。別の資料と照合する。違う考え方から確認する。
AIは、この「別の見方」を増やす道具としても使えると思っています。
人が作ったものをAIへ丸投げし、正解を決めてもらうのではありません。AIに別の確認方法や見落としやすい条件を挙げてもらい、人が元資料と結果を確かめる。そうすれば、これまでのチェックを置き換えずに補助できます。
「AIを使っていいよ」だけでは難しい
私から見ると、「ここはAIで調べられる」「これは別の観点から確認してもらえる」と思うことがあります。しかし、社員から同じように見えるとは限りません。
Geminiを使ってよい。ChatGPTを使ってよい。そう言われても、今やっている数量計算のどこで使うのか、今描いているCADの何を手伝わせるのかまでは分かりません。
これは、プロンプトの書き方以前の問題なのだと思います。
AIの機能を知っていることと、自分の仕事の中からAIを使える場所を見つけることは別です。
環境を用意しただけで、仕事の進め方まで自然に変わるわけではありません。
AIの機能ではなく、実際の仕事から考える
そう考えると、AIの機能を順番に教えるだけでは足りなさそうです。むしろ、「今、何をやっている?」から始めた方が分かりやすいと思います。
数量計算をしているなら、どこで過去資料を探し、何を根拠に計算し、どうチェックしているのかを見る。
CADを描いているなら、作図そのものだけではなく、その前に確認する条件や、作図後の照査までを見る。
過去資料を探しているなら、どの条件を手掛かりにしているのかを整理してAIへ渡してみる。
チェックをしているなら、自分が作った方法とは別の確認方法をAIと考えてみる。
実際の仕事を細かく見ていけば、「作る」以外にも、調べる、比べる、説明する、確認するといった使いどころが見えてきます。
使える社員より、使いどころを見つけられる社員へ
会社としてAI環境を用意すれば、AIに触れる機会は増やせます。ただ、それだけで仕事が変わるわけではありません。
次に必要なのは、自分が今やっている仕事を見て、「ここならAIを使えるかもしれない」と考えられることだと思います。
- 作るために使う
- 調べるために使う
- 比べるために使う
- 確認するために使う
- 必要がなければ、AIを使わないと判断する
全社員へAIを使える環境を広げた後は、社員が自分の仕事の中から、こうした場所を見つけ始めるかを見ていきたいと思っています。
そして実際にAIと仕事をすると、もう一つ別の問題が出てきます。
AIと一緒に調べたこと、考えたこと、間違えて直したことを、どこに残すのか。
次の記事では、そのことを考えてみます。