技術ノートのネタが尽きない理由。記事を書くために記事を書いていないから
技術ノートの題材は、特別なネタ探しではなく、日々の実務で生まれる疑問、失敗、試行錯誤から見つかります。生成AIとの対話を通じて、仕事と思考の過程を企業発信へ変える方法を紹介します。
当社の技術ノートは、ここ最近かなり速いペースで増えています。
自分でも、少し不思議なくらいです。
ただし、毎日パソコンの前に座って、
「今日は何の記事を書こうか」
と考えているわけではありません。
むしろ逆です。
記事を書くためのネタ探しを、ほとんどしていません。
普通に仕事をして、分からないことをAIに聞き、試して、失敗して、また考える。
その過程で、「これは同じことで困っている人がいるかもしれない」と思ったものを、後から技術ノートにしています。
記事を書く時間より、考えている時間の方が長い
技術ノートを作るとき、最初から記事の構成を考えているわけではありません。
出発点は、実務の中で生まれた小さな疑問です。
「なぜこの作業はこんなに時間がかかるのか」「AIならどこまでできるのか」「最初はうまくいくと思ったのに、なぜ失敗したのか」
そうした疑問を生成AIへ投げ、返ってきた答えを見ながら、自分の経験や実務上の条件を加えていきます。
「そこではない」「実務ではこの条件が重要だ」「別の事例とつながるのではないか」と対話を重ねるうちに、単なる疑問が一つの考えとしてまとまってきます。
原稿ができるのは、その後です。
自分の感覚としては、
記事を書いているというより、考えていたことが記事になっています。
成功したことだけを書こうとすると、たぶん続かない
技術系の記事というと、
- この方法でうまくできた
- このツールを使えば効率化できる
- この手順で実行すればよい
という完成形を紹介するものが多くあります。
もちろん、それも役に立ちます。
ただ、実際の仕事はそれほどきれいには進みません。
やってみたら動かない。思っていた結果にならない。AIは図面を理解しているように見えるのに、正しい図面を作れない。画像から座標を読み取らせようとしたが、そもそもDXFの中に正確な数値が入っていた。技術基準をAIに読ませれば便利だと思ったが、回答をそのまま技術判断には使えない。
そういうことが何度も起きます。
しかし、後から考えると、価値があるのは「失敗した」という事実だけではありません。
なぜ失敗したのかを考えた過程に価値があります。
どこで前提を間違えたのか。何をAIに任せすぎていたのか。人が判断すべき部分はどこだったのか。別の方法ならどうなるのか。
そこを考えていくと、一つの失敗から、次の仕事にも使える考え方が出てきます。
当社の技術ノートに途中経過や失敗の話が多いのは、そのためです。
仕事をしている限り、材料が出てくる
記事を書くために記事を書こうとすると、いずれネタがなくなると思います。
しかし、実務をしている限り、疑問はなくなりません。
- なぜこの作業には時間がかかるのか
- もっと違うやり方はないのか
- AIならどこまで支援できるのか
- この判断を社員へどう伝えるか
- 今まで当たり前にやってきたが、本当にこれが最適なのか
仕事をしていると、毎日のように小さな違和感が出てきます。
以前なら、その場で考えて終わっていたものも多くありました。
今は、疑問をAIへ投げる。少し調べる。試してみる。結果をまたAIへ返す。そのやり取りが記録として残ります。
だから、技術ノートの材料も自然に増えていきます。
AIがあると、「知識ができる途中」まで残せる
以前の記事の作り方なら、ある程度結論が出てから文章にしていたと思います。
しかし、生成AIとの対話では、結論が出る前から記録が始まります。
- 最初の仮説
- 勘違いしていたこと
- 途中で出てきた疑問
- 試してみた結果
- 考え直した理由
こうしたものが、やり取りの中に残ります。
後から整理すると、
最初はこう考えていた
↓
実際に試すと違った
↓
原因を考えると、問題は別のところにあった
↓
次に使える考え方が見つかった
という記事になります。
完成した知識だけではなく、知識ができる途中まで記録できる。これは、技術ノートを続けるうえで大きな変化でした。
仕事の記録を、そのまま公開するわけではない
もちろん、AIとの会話や実務の記録を、そのまま会社サイトへ掲載しているわけではありません。
仕事の記録には、顧客情報、案件を特定できる条件、社内だけで共有すべき内容、検討途中でまだ確かめていない仮説などが含まれることがあります。
公開するときは、
- 顧客や案件を特定できる情報を除く
- 社内固有の運用や非公開情報を切り分ける
- 技術的な事実と自社の経験・考察を分ける
- 未確認の内容を断定しない
- 読む人が別の仕事にも応用できる論点へ整理する
という確認が必要です。
実務の記録は記事の原料ですが、原料と公開物は同じではありません。
仕事の中で見つけた問いを、社外にも共有できる知見へ編集する。
そこは人が判断する部分だと考えています。
技術ノートと社内ナレッジは、出口が違う
実務で生まれた考えを残すという点では、技術ノートと社内ナレッジはよく似ています。
違うのは、誰が何のために使うかです。
社内ナレッジには、案件固有の条件や判断の細部まで必要になることがあります。一方、技術ノートでは、固有情報を外し、他の人にも役立つ考え方へ整理します。
同じ出来事からでも、
社内向け:次の業務で再利用するための具体的な記録
社外向け:試行錯誤から得た、共有可能な考え方
という二つの出口を作れます。
仕事の中で生まれた思考をその場で消さず、目的に合わせた形でもう一度使う。その習慣が、結果として会社の知識と発信の両方を増やしています。
記事を量産したいわけではない
技術ノートの本数を増やすこと自体が目的ではありません。
数だけ増やしても意味はないと思っています。
自分たちが実際に試したこと、失敗から分かったこと、考え方が変わったことを残した結果として、本数が増えています。
そのため、更新本数を先に決めて「週に何本書かなければならない」とは考えていません。
書くことがなければ、無理に書かない。
ただし、仕事をしている限り、たぶん何かは出てきます。
実際、この文章のテーマ自体も、別の話をAIとしている途中に生まれました。
発信の方法そのものが変わったのかもしれない
生成AIによって、文章を整える負担はかなり下がりました。
しかし、自分にとってもっと大きいのは、
仕事と発信を、完全に別の作業にしなくてもよくなったことです。
仕事をする。疑問を持つ。AIと考える。試す。失敗する。考え直す。
その過程の中から、社内ナレッジも技術ノートも生まれます。
これは、以前の「会社のホームページを更新する」という感覚とはかなり違います。
広報のためだけに記事を書くのではなく、
会社が日々考え、試していることの一部を、外へ開いていく。
そんな感覚に近いと思います。
だから、技術ノートのネタが尽きない理由は単純なのかもしれません。
記事を書くために、記事を書いていないからです。
仕事をして、考え続けている限り、その途中には残す価値のあるものがあります。
生成AIは、それを公開できる文章へ変えるところまで手伝ってくれるようになりました。
当社の技術ノートは、これからもそんな形で増えていくのだと思います。
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