スクショからCSV化――AIで面倒な手入力を減らす
図面やPDFに埋まっている座標、測点、数量などの数値を、スクリーンショットからAIでCSVへ変換する方法を紹介します。設計判断ではなく、面倒な転記作業の下書きをAIへ任せる小さな実務改善です。
スクショからCSV化――AIで面倒な手入力を減らす
設計業務をしていると、図面やPDF、古い資料の中にある数値を、ExcelやCADで使うために手入力する場面があります。
例えば、座標一覧です。
古い用地図や測量図に点名、X座標、Y座標が記載されていても、それが画像やスキャンデータであれば、そのままCADで使えるわけではありません。
これまでは、図面を見ながら一つずつ入力することも多かったと思います。
こうした作業は、生成AIを使うとかなり楽になる場合があります。
難しい仕組みを作る必要はありません。まずは、必要な部分のスクリーンショット一枚から試せます。
やり方は単純です
必要な表を画面へ表示して、スクリーンショットを撮ります。
その画像をChatGPTやGeminiなどの生成AIに貼り付けて、次のように指示します。
この表を、点名・X座標・Y座標の順でCSV形式にしてください。見えない数字や自信のない箇所は推測せず、「要確認」としてください。
すると、画像内の文字や数値を読み取り、例えば次のような形に整理できます。
P1,12345.678,98765.432
P2,12350.123,98770.456
P3,12355.789,98780.012
あとはExcelへ貼り付けたり、CSVファイルとして保存したりできます。
元のPDFに文字情報や表データが残っている場合は、スクリーンショットよりも、元データを直接利用した方が読み取りやすいこともあります。まず元データの状態を確認し、画像としてしか使えない場合にスクリーンショットを使う、という順番がよいと思います。
座標値なら、CADの既存機能へつなげられる
当社で使用しているV-nasには、座標値を入力し、その座標系の正しい位置へ点をプロットしたり、結線したりする機能があります。
そのため、次のような流れにできます。
- 古い図面の座標一覧をスクリーンショットする
- AIでCSV形式へ変換する
- 点数、点名、座標値を元図と照合する
- CADの座標入力機能へ貼り付ける
- 座標点をプロットする
AIにCAD操作そのものを任せているわけではありません。
AIには、画像の中にしかなかった座標値を、CADが利用できるデータへ変換してもらいます。その後の作図には、もともとCADに備わっている機能を使います。
これだけでも、一つずつ座標値を手入力する作業をかなり減らせます。
縦断図の測点入力にも使える
同じ方法は、座標一覧以外にも使えます。
例えば縦断図です。
縦断図の下部には、測点、計画高、地盤高などが並んだ帯があります。Excelで縦断計算や計画値の計算をしようとすると、まず測点を入力しなければなりません。
100mピッチのような単純な測点であれば、それほど手間ではありません。しかし実際には、次のように端数のある測点が何十点も並ぶことがあります。
SP=125.37
SP=143.82
SP=176.54
SP=201.06
これを一つずつExcelへ入力するのは、地味に時間がかかります。
そこで縦断図の測点欄をスクリーンショットし、
測点だけを左から順番に読み取り、1行に1点のCSV形式にしてください。
と指示します。
その結果を元図と照合した後、Excelの計算表へ貼り付ければ、入力作業を減らせます。
図面の中に埋まっている数値を再利用する
この方法は座標値や測点だけに限りません。
- 数量表
- 寸法表
- 計算書の一覧
- 古いスキャン資料に記載された数値
- PDF内の表
人間が見れば読める。しかし、ExcelやCADから見ると、そのままでは使えない。
そうした情報を、AIを使って再利用できるデータへ変換するという考え方です。
専用の仕組みを作らなくても、スクリーンショット一枚から試せるのが便利なところです。
資料によって、読み取りやすいAIが違うこともある
実際に試してみると、使用するAIや資料の状態によって読み取り精度に差が出ます。
特に縦断図の帯のように、文字や数値の位置が少しずれていたり、複数の列が近接していたりする資料では、行や列を取り違えることがあります。
当社で試した範囲では、縦断図の帯から測点を読み取る用途で、GPTよりGeminiの方が安定して読み取れたケースもありました。
これは、いつでもGeminiの方が正確だという意味ではありません。画像の解像度、文字の大きさ、罫線、資料の種類などによって結果は変わります。
一つのAIだけに決めず、資料や用途によって使い分ける。重要な資料なら同じ画像を複数のAIに読ませて比較する。そうした使い方もできます。
最後は必ず元資料と照合する
設計数値を扱う以上、AIが出力した結果をそのまま採用することはできません。
特に注意したいのは、次のような誤読です。
- 小数点の位置
- マイナス記号の見落とし
- 数字一文字の読み違い
- 桁数の不足
- 行や列のずれ
- 点名や測点数の不足
座標値や設計数値では、一文字の誤りでも大きな問題になる可能性があります。
まず、元資料とCSVの行数や点数が一致しているかを確認します。そのうえで、元資料と出力結果を横に並べ、一行ずつ照合します。
ここでAIに任せているのは、設計判断ではありません。
面倒な転記作業の下書きです。
人間は、AIが作ったデータが元資料と一致しているかを確認します。
また、業務資料を外部のAIサービスへ渡す場合は、社内ルールや利用しているサービスの契約・設定を確認する必要があります。案件名、個人情報、機密情報など、読み取りに不要な部分はスクリーンショットへ含めないことも大切です。
「入力する」から「確認する」へ
従来は、
全部手入力する
↓
入力ミスがないか確認する
という二つの作業が必要でした。
AIを使うと、
AIに一度データ化させる
↓
元資料と照合する
という流れに変えられます。
確認作業がなくなるわけではありません。入力する仕事を減らし、確認する仕事へ寄せるということです。
これは小さな違いに見えますが、日々の実務ではかなり効いてきます。
10分、15分の短縮でも積み重なる
一回の作業だけを見れば、短縮できる時間は10分、15分程度かもしれません。
しかし、座標を入力する、測点を入力する、数量を転記する、表を作るといった小さな作業は、日々繰り返し発生します。
仮に15分短縮できる作業が一日に3回あれば、それだけで45分です。毎日続けば、月単位では大きな時間になります。
さらに重要なのは、単純に時間を短くすることだけではありません。
数字を一つずつ入力するために使っていた時間や集中力を、設計条件の確認、計算結果の照査、図面の確認、技術的な検討、発注者への説明といった、人間が判断すべき仕事へ回せます。
AI活用というと、大規模な自動化や劇的な効率化を考えがちです。
しかし実務では、
10分、15分の小さな改善を、一日の中で何度も積み重ねること
にも大きな意味があります。
難しいことから始めなくてもいい
AIに設計をさせる。CADを自動操作させる。複雑なシステムを作る。
そうした使い方もありますが、最初からそこを目指す必要はありません。
人間が読めるだけだった情報を、ExcelやCADで使える形へ変える。
そのために、スクリーンショットを一枚AIへ渡す。
それだけでも、仕事は少し楽になります。
こうした小さな使い方を日々増やしていくことも、実務でAIを使う一つの形だと思います。
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