ChatGPT WorkとExcel内AIアドインで、同じExcelを編集して比べてみた
長年使っている会社カレンダーをChatGPT WorkとExcel内AIアドインで編集しました。処理時間と書式の違い、指示の組み立て方、固定処理をVBAへ移す判断を実測から考えます。
前回の記事「AIにExcelを任せる前に考えたいこと」では、鉄筋加工図から必要な情報をAIに読み取らせ、CSVを介して既存の鉄筋重量算定表へ数字を渡す方法を試しました。
その中で、一つ気になっていたことがあります。
AIに既存のExcelを直接編集させる場合、どこまで安心して任せられるのか。
新しいExcelを一から作るのであれば、それほど気になりません。
しかし、会社で何年も使っているExcelには、数式、書式、列幅、行高、印刷設定、シート間リンク、独自の運用ルールなどが積み重なっています。
その一部だけを変更したいとき、AIにどこまで触らせてよいのか。
そこで今回は、会社で実際に使っているカレンダーを使い、ChatGPT Workと、Excelを開いた状態で使うAIアドインに、ほぼ同じ作業をさせて比べてみました。
ここでいうExcel内AIアドインは、OpenAIが案内している、開いているExcelブックをChatGPTから操作する使い方です。2026年9月時点のChatGPT for Excelの公式案内では、ChatGPT Workは表計算ファイルを作成・編集でき、開いているMicrosoft Excelを直接確認・更新する場合はChatGPT for Excelアドインを使う方法が示されています。ただし、表計算の依頼すべてで直接操作が使われるとは限らないとも説明されています。
使ったのは、何年も使っている会社カレンダー
今回使ったExcelは、会社で長年使っている予定表です。
1か月ごとにシートを分けていて、過去分も含めると数十シートあります。
毎月行っていることは、それほど複雑ではありません。
- 前月のシートをコピーする
- 日付を翌月へ変更する
- 曜日を更新する
- 土曜日、日曜日、祝日を色分けする
- 祝日名を変更する
- 予定欄を初期化する
- 有休残のリンクを更新する
- 30日までの月なら31日列を調整する
大きな作業ではないので、これまではVBAを組まず、手作業で済ませてきました。
ただ、こういう「小さくて決まった作業」こそ、今のAIならどの程度任せられるのか。それを試してみました。
まずChatGPT Workでやってみた
最初にChatGPT WorkへExcelファイルを渡し、次の条件で作業を依頼しました。
既存シートは変更せず、前月をコピーして、新しい月のシートだけを作成する。
ここで一番気にしていたのは、新しく作るシートの出来ではありません。
もともと存在している過去シートが変わらないこと。
過去にAIへExcel編集を任せたとき、列幅、行高、フォント、印刷範囲など、直接変更を頼んでいない部分まで変わったように見える経験があったからです。
そこで今回は、既存シートには触れないことをかなり明確に伝えました。
結果として、完成した新しい月のシートはかなりきれいにできていました。既存シートについても、今回確認した範囲では問題は見つかりませんでした。
ただし、一つ大きく気になったことがありました。
時間です。
1か月分のシートを追加するのに、ChatGPT Workでは14分23秒かかりました。
その中では、既存シートが変更されていないかを確認する処理も行っていました。単純にシートをコピーし、日付を書き換えるだけの時間ではありません。
それでも、月に1回の軽作業に14分以上かかるとなると、実務では少し重いと感じます。人が手作業で行った方が早い可能性もあります。
次にExcel内のAIアドインで試した
次に、同じExcelを通常どおり開き、その中のAIアドインから同様の作業を指示しました。
最初の結果は、かなり速いものでした。体感では2〜3分程度です。
ChatGPT Workの14分23秒と比べると、かなり速く感じました。
ところが、完成した新しいシートを確認すると、少し問題がありました。
- C列が非表示になっていた
- 日付と日付の境目の罫線が太くなっていた
既存シート自体は崩れていません。
ただ、新しく作ったシートが、コピー元と完全に同じ状態にはなっていませんでした。
速くできたから、それでよいとは言えません。前回の記事で書いた「目的の作業ができたかだけではなく、目的以外のところが変わっていないかを見る」という問題が、ここでも出てきました。
「同じにして」では、変えるものまで元に戻った
そこで、追加で修正を指示しました。
罫線、列幅、表示状態などを、コピー元と同じにしてほしい。
ここまでは改善しました。
ところが、「前月と同じ状態にして」という指示を強くした結果、今度は土日祝日の色分けまで前月と同じ位置へ戻ってしまいました。
つまり、変えてほしくないものと、翌月に合わせて変えるものの区別が十分ではなかったのです。
人間からすると、
見た目は同じにして、日付や曜日は新しい月に合わせて。
で伝わるような気がします。
しかし、「前月と同じ見た目」の中に、曜日に応じた色分けまで含まれると解釈されることがある。
そこで、指示そのものを組み直すことにしました。
「維持するもの」と「変更するもの」を分けた
最後は、指示を二つに分けました。
維持するもの
- 列幅
- 行高
- フォント
- 罫線
- 結合セル
- 印刷設定
- ページ設定
- 列の表示・非表示状態
新しい月に合わせて変更するもの
- 日付
- 曜日
- 土日祝日の色分け
- 祝日名
- 予定欄
- 有休残の参照先
この形にして、もう一度最初からやり直しました。
結果はかなり良好で、今回の目的はほぼ達成できました。
処理時間は、2分46秒でした。
ChatGPT Workの公式案内でも、既存ファイルを使う場合は、何を維持し、何を置き換えるかを伝え、完成後に数式、レイアウト、変更箇所などを確認するよう勧めています。今回の試行でも、「同じにして」という一言より、維持する条件と変更する条件を分けた方が、意図を伝えやすいと分かりました。
今回の結果を並べてみる
今回の比較を簡単に整理すると、次のようになります。
| 方法 | 処理時間 | 確認した結果 |
|---|---|---|
| ChatGPT Work | 14分23秒 | 完成度は高く、確認した範囲では既存シートも維持されていた。ただし時間が長かった |
| Excel内AIアドイン・初回 | 約2〜3分 | 速かったが、C列の非表示や罫線の変化が発生した |
| Excel内AIアドイン・修正追加 | 約4分 | 書式は改善したが、土日祝日の色まで前月と同じ位置へ戻った |
| Excel内AIアドイン・条件整理後 | 2分46秒 | 維持するものと変更するものを分け、ほぼ目的どおりになった |
これは同じ条件で何度も繰り返した性能試験ではありません。それぞれの時間は、今回のカレンダーと、そのときの指示で行った一回の実測です。
したがって、この結果だけで「ChatGPT WorkよりExcel内AIアドインの方が常に速い」とは言えません。
ChatGPT Workは時間がかかった一方、かなり慎重に確認しながら処理していました。Excel内AIアドインは速かった一方、最初の指示では新しいシートの書式にずれが出ました。
今回分かったのは、製品の優劣というより、どこからAIを使うかと、条件をどのように定義するかで、結果や使い勝手がかなり変わるということです。
処理時間の差を、仕組みの違いとは断定できない
今回のテストをしながら、ファイルの扱い方の違いも気になりました。
人がExcelを編集するときは、Excelを開き、セルやシートを編集し、そのまま保存します。
ChatGPT WorkへExcelファイルを渡した場合、利用者から見えるのは、ファイルを渡し、処理されたファイルを受け取るところまでです。内部でどのように読み込み、変更し、出力しているのかを、今回の画面だけから確認することはできません。
一方、Excel内AIアドインでは、Excelを開いた状態で作業を依頼しました。
この違いが14分23秒と2分46秒の差に関係した可能性は考えられます。ただし、処理時間はファイルの大きさ、確認内容、指示、実行時の状況などでも変わります。
公式資料でも、今回の時間差の原因まで説明されているわけではありません。
したがって、
Excelの外で処理したから遅かった。
Excelの中で処理したから速かった。
とまでは言えません。
ここは、今回そうなったという実測と、考えられる理由を分けておきたいと思います。
そして、結局VBAでもよいのではないか
ここまで試したところで、もう一つ思いました。
今回のカレンダー処理は、毎回行うことがほぼ同じです。
- 前月シートをコピーする
- 翌月へ変更する
- 日付と曜日を更新する
- 土日祝日を所定の色へ変更する
- 予定欄を空にする
- 有休残を翌月へつなぐ
- 30日までの月なら31日列を処理する
これは、かなりルールが固定されています。
つまり、最初に条件さえ整理してしまえば、VBAの方が向いている可能性があります。
VBAなら、「このシートをコピーする」「新しくできたシートだけを編集する」「過去シートには触れない」という処理をコードとして固定できます。
列幅や罫線をAIに毎回再現させる必要もありません。Excel自身のシートコピー機能を使えばよいからです。
そう考えると、今回のカレンダーは、AIでできるかどうかよりも、AIで試した結果、ルールが明確になったので、固定処理へ移した方がよい仕事なのかもしれません。
今回の実験で見えた3つの使い分け
今回の試行と、前回の鉄筋加工図を並べると、今のところ次のような使い分けがしっくりきます。
- 曖昧さがある仕事はAI:図面ごとに文字や表の位置が違う中から、必要な情報を読み取る
- Excelを見ながら、その場で修正する仕事はExcel内AI:開いている既存ブックの一部を、人が確認しながら変更する
- 毎回同じ固定処理はVBA:決まったルールを、同じ手順で繰り返す
もちろん、すべての仕事をこの三つへきれいに分けられるわけではありません。新しいExcelを一から作るなら、ChatGPT Workが使いやすい場面もあると思います。
ただ、AIでできることと、AIでやるべきことは同じではないと感じました。
AIに一度やらせてみることで、その仕事の条件や例外が見えてくる。ルールが固まったら、VBAなどの再現性の高い道具へ移す。逆に、条件が毎回変わるところはAIへ残す。
速度、再現性、確認のしやすさ、変更の多さを見ながら、一つの道具ですべてを行おうとしない。
今回の会社カレンダーは、その使い分けを考えるための、ちょうどよい小さな実験になりました。