何も頼んでいないのに、AIが会社の仕事を指摘してきた――dotとWork、開発中のAIエージェントの境界が見えなくなってきた
Workの開始画面に、指導記録と資料の食い違いや、メールに届いた予定への確認が提案されていました。古いクラウド資料を参照した可能性も踏まえ、dot・専門エージェントの役割と、会社が残す知識、人が確かめる仕事を考えます。
ここ数日、AIを使っていて驚かされることが続いています。
この連続した三本の技術ノートでは、同じ時期の体験を違う側から見ています。最初は、TSVという小さな疑問から音声入力や業務管理へ考えが広がった話。次は、久しぶりに通常Chatへ戻ったとき、図解や会話のテンポに変化を感じた話です。今回は、Workの開始画面に、こちらがまだ依頼していない会社の仕事が提案されていた体験を残します。
久しぶりに通常のChatGPTを使ってみると、以前とは画面も回答の見せ方もずいぶん変わっていました。その第一印象については、前の記事に書きました。
ところが、今度はChatGPTのWorkを新しく開いたときに、さらに驚くことがありました。Workは、複数の工程を進め、資料や成果物を作る仕事を任せるための機能です。ここで書くのは、2026年10月8日時点で私の画面に表示された提案の話で、実際のファイル処理が復旧したことを示すものではありません。
まだ何も頼んでいないのに、当社の具体的な仕事について提案が表示されていたのです。
最初は、よくあるおすすめ機能だと思いました。
しかし、内容を読んでみると、どうも違います。
最近の技術指導に関係する成果物の修正状況や、社内で対応すべき手続きについて、かなり具体的な内容が書かれていました。
しかも、当社が実際に扱っている業務や連絡と結び付いているのです。対応状況まで正しいと確認したわけではありませんが、一般的なおすすめとは違いました。
これはいったい、いつからできるようになったのでしょうか。
少なくとも、数か月前に私が使っていたときには、このような体験はありませんでした。
社員への指示が、成果物に反映されていない?
特に驚いたのは、Google Driveに保存している技術指導の記録に関連した提案です。
当社では、社員への技術指導を録音し、文字起こしして整理したものを、ナレッジとして蓄積しています。
もともとは、同じ説明を何度も繰り返さずに済むようにするために始めた取り組みです。その経緯は、以前の技術ノートに書いています。
指導ナレッジには、技術的な考え方だけでなく、実際に社員へ伝えた修正指示も含まれています。
今回のWorkは、その指示事項について、関連する成果物に反映されていないという内容まで示してきました。
単に「以前、このような指示がありました」と記録を探してきたのではありません。
「指示した内容が成果物に反映されていない」という趣旨で、実際の仕事の状態に踏み込む指摘をしてきたのです。これはAIの提案内容であり、私が正式な成果物の修正漏れを確認した結果ではありません。
ここには驚きました。
というのも、指導した内容と数量資料などの中身を見比べなければ、なかなか出てこないように感じる内容だったからです。
もちろん、Workが実際にExcelのセルや数量データを読み取って照合したのか、それとも指導記録や資料の情報から不整合を推定したのか、画面だけでは断定できません。
ただ、当社では以前から専門業務向けのAIエージェントを開発しており、その過程で、数量データの中身をAIに参照させるテストも繰り返してきました。
そうした過去の作業や、接続されている情報が今回の提案に関係しているのかもしれない、とも考えました。
もっとも、実際につながりがあるかどうかは分かりません。
そして、もう一つ注意すべきことがあります。
当社では、正式な図面や計算書などの原本を、社内の共有ストレージであるNASで管理しています。Google Driveはバックアップや共有、AIへ資料を渡す用途にも使っていますが、NASの原本とクラウド上の資料では更新のタイミングが異なる場合があります。以前のクラウドがAIとの仕事の基盤にもなった話に、今回、資料の新しさという別の課題が加わりました。
今回、Workが参照したと考えられるクラウド上の資料は、最新の状態に更新されていないものでした。
そのため、AIが「反映されていない」と指摘したとしても、正式な成果物まで未修正だったことにはなりません。
むしろ、古い資料を参照した結果、指導記録との間に食い違いが見えた可能性があります。
だから、この提案だけで実際の修正漏れがあったと判断することはできません。まず、AIが示した参照資料とその版・更新日時を確かめ、NASの原本と照合する。修正指示の意味や今回の条件も確認し、必要な事項は元請会社へ確認を求める。その順番は残ります。
それでも、何も頼んでいない段階で、ここまで具体的に仕事の状態を指摘してきたこと自体が、非常に印象的でした。
Gmailからも、期限付きの仕事を拾ってきた
さらに見ていくと、技術指導とはまったく別の提案もありました。
こちらは、Gmailに届いたメールの内容が手掛かりになっているようです。接続アプリの公式説明では、接続したサービスから情報を検索・参照する使い方が案内されています。ただし、今回の開始画面の候補がどの仕組みで作られたのかまでは、この説明だけでは分かりません。
例えば、事業継続に関する計画について、訓練や見直しなどの取り組みが実施されているか、という確認です。
実際に、関係機関からは、計画に記載した取り組みの実施時期が近づいていることを知らせ、実施状況を確認するよう促すメールが届いていました。
また、健康管理に関係する社内手続きについて、予定どおり実施できているかを確認するような提案もありました。
こちらも、実施日程や対応事項が記載されたメールが届いています。
こうした連絡は、日常業務では珍しくありません。
ただ、メールが届いた時点ですぐに対応するものばかりではありません。
期限が少し先だったり、担当者が別にいたり、実施後にあらためて確認が必要だったりします。
そのため、人間がメールを読み、内容を理解し、必要に応じて予定やタスクに登録することになります。
ところが今回のWorkは、そうしたメールから「この件は対応できていますか」という確認作業を提案してきたように見えました。
メールの内容を要約するだけではなく、そこに含まれる予定や依頼を、次に確認すべき仕事へ変換しているように見えたのです。
もちろん、メールの内容から提案を作ったことと、実際の対応状況まで把握していたことは別です。
例えば、メールに訓練の実施予定が書かれていても、それが既に実施されたかどうかは、別の記録を確認しなければ分からない場合があります。
ただ、その「確認する必要があるかもしれない」という仕事を、こちらが頼む前から提示してくることに、新しさを感じました。
同じ「仕事の提案」でも、中身はずいぶん違う
今回のWorkの提案を見ていると、大きく二つの種類があるように思いました。
一つは、社内の指導記録と業務資料の間に、具体的な不整合があると指摘するものです。
もう一つは、メールに書かれた予定や依頼から、対応状況を確認する仕事を見つけるものです。
前者は、技術指導の内容と資料の状態が関係しています。
後者は、外部から届いた連絡と、会社としての対応状況が関係しています。
情報の性格も、必要となる確認作業も違います。
私には、どちらも単に資料を探したり、文章を要約したりするだけとは違って見えました。
保存されている情報から、仕事上の問題や確認事項を浮かび上がらせているように見えるのです。
ここで、少し考えてしまいました。
従来、AIに過去の資料を読ませるときは、こちらから質問するのが普通でした。
以前の指示を探してほしい。
このメールの要点をまとめてほしい。
対応期限を整理してほしい。
ところが今回は、何も質問していません。
Workの開始画面に、既に具体的な仕事の候補が並んでいたのです。
もちろん、その提案を選ぶだけで、すべての資料が検証されたわけではありません。
しかし、AIに仕事を探してもらう段階を飛び越えて、AIの方から仕事を持ってくるような体験になっていました。
これは、これまでとは少し違うものを感じます。
ちょうどdotと、自社エージェントの役割を考えていた
今回の出来事が余計に強烈だったのには、理由があります。
少し前から、dotという、会話の間も継続した仕事を支援するChatGPTのAIアシスタントの動きにも驚かされていたからです。公式説明にも、新しい質問がなくても接続情報を確認し、支援の方法を提案する動きが案内されています。
その体験は、開発中の樋門AIエージェントを社員と共有する話にも書きました。dotが前日の条件と、その日に作った資料の違いを拾い、こちらから個別に頼んでいなくても確認を返してきたのです。
そうした先回りする動きを、実際の仕事の中で体験しました。
一方、当社では、土木設計の専門業務を支援するAIエージェントを数か月かけて開発しています。
これは単なる構想ではありません。
現在、私自身の環境で開発・検証しているものを、社員にも渡し、会社全体で利用しながら育てる技術資産にしようとしているところです。
ただ、社員への展開を進めようとしたところでWorkのエラーが続き、作業が思うように進んでいません。
そのような状況で、dotの予想以上の動きを体験し、自社エージェントとの役割分担を考え始めていました。
さらに、久しぶりに通常のChatGPTを使うと、回答の表現方法まで大きく変わっていました。
そして今度は、Workが何も頼んでいないのに、実際の業務について具体的な指摘や提案をしてきたわけです。
こうなると、少し混乱してしまいます。
dotとWork、そして自社で開発しているエージェントは、これからどういう役割分担になるのでしょうか。
私の中では、dotは継続的な文脈を踏まえた支援、Workは依頼した仕事の実行、専用エージェントは専門業務の支援、と整理していました。これは正式な製品分類というより、私が使う上での役割分担です。
ところが、Workまで先回りして仕事の候補を出すようになると、利用する側から見た境界が重なり始めます。
もちろん、だから専用エージェントが不要になるわけではありません。
元請会社から受けた条件を確認し、図面・計算書・数量の関係をたどり、照査で何を確かめるかを整理する。そうした専門業務の進め方には、自社で蓄積し、改善しながら使っていく意味が残ります。AIには整理や比較を補助させ、適用できる範囲は人が確認し、設計上の判断が必要な事項は元請会社へ確認を求めます。
しかし、社内の情報を検索したり、関連する資料を読み取ったり、そこから仕事を見つけたりする機能まで、今後どこまで自分たちで作る必要があるのだろう。
そんな疑問が、急に現実味を帯びてきました。
仕組みが変わっても、会社の知識は自分たちで育てる
今回、特に考えさせられたのは、この点です。
当社が社員への技術指導を録音し始めたのは、AIのためではありません。
同じ説明を何度も繰り返すのを減らし、社員が過去の指導を自分で確認できるようにしたかったからです。
その後、文字起こしや整理の試行錯誤を重ねる中で、技術的な判断の経緯まで含めた会社のナレッジへと発展してきました。
そして、そうした記録を将来AIにも利用させ、社員とAIが会社の知識を共有できるようにしたいと考えるようになりました。
これも、昨日今日思いついた構想ではありません。
現在開発している専門AIエージェントも、こうした考え方とつながっています。
ところが今回、特別に開発していたエージェントではなく、通常のWorkが社内の情報を踏まえた具体的な提案をしてきました。
今回の指摘が、これまで蓄積してきた社員指導ナレッジの内容や整理方法によって、どこまで実現したのかは分かりません。
また、専門エージェントの開発中に試してきた数量データの参照が、今回の動きと関係しているのかも不明です。
ただ、もしそうした蓄積が提案の具体性につながっているのであれば、非常に興味深いことです。
共通のAI製品の機能と、その会社が積み上げてきた情報が組み合わさることで、非常に個別性の高いAI支援が生まれる可能性がある。
同じWorkを利用していても、接続されている情報や、その蓄積の仕方によって、得られる体験が違ってくるのかもしれません。
そう考えると、会社が長期的に持つべきものは何なのか、という問いが出てきます。
AIの機能そのものは、製品を提供する側が次々に進化させています。
一方、その会社がどのような仕事をし、どんな判断を積み重ねてきたのかという知識は、外部のAI製品には最初から備わっていません。
それは、自分たちが蓄積していくものです。
自社に必要な機能を開発することも大切ですが、会社独自の知識や判断基準を育て、それを進化するAIにどう利用させるかという考え方も、ますます重要になるように感じました。
伴走する側も、変化を見ながら伝え方を考える
実は現在、他社に対してAI研修の伴走支援を行うことが決まっています。
研修資料も既に作成しました。
ところが、その準備を進めている間にも、AIの機能は次々に変わっています。
ここ数日だけでも、通常のChatGPT、dot、Workで、それぞれ異なる変化や新しい体験がありました。
しかも、単に回答が賢くなるとか、画面が便利になるという話だけではありません。
私が質問して初めて動くと思っていた画面に、過去の情報を手掛かりにしたような仕事の候補が、先に並んでいた。少なくとも私の使い方では、新しい体験でした。
こうなると、何をどう説明すればよいのか、少し考え込んでしまいます。
もちろん、基本的な操作方法や、AIを利用する際の注意点を伝えることは必要です。
しかし、特定の機能の使い方だけを教えていても、その機能は数か月後には変わっているかもしれません。
それよりも、日常業務の情報をどう残すか、AIが出した提案をどう検証するか、自社で作る仕組みと汎用AIをどう組み合わせるか。
そうした考え方を伝えることも重要になるのでしょう。
もっとも、教える側の自分自身が、今まさに新しい機能に驚かされているのですが。
これからのAI研修は、決まった機能を一度説明して終わりというものではなく、変化するAIにどう向き合い、仕事の中で活用方法を見直していくかを、一緒に考えることも必要なのかもしれません。
AIが先に提案するなら、人は何を確かめるか
今回、Workの新規画面を開いて、何も頼んでいないのに実際の業務に関係する提案が表示されたことには驚きました。
しかも、その内容は一種類ではありません。
社員への技術指導が成果物に反映されていないという具体的な指摘もあれば、メールに届いた連絡から、期限や対応状況に関する確認作業を提案するものもありました。
これまで蓄積してきた社内の記録や、日常的に届くメールが、次の仕事を考えるための材料になり始めているように見えます。
数か月前には、このような体験はありませんでした。
それが今、普段使っているWorkの開始画面で起きています。
そして私はちょうど、dotと自社開発エージェントの役割分担を考えていたところでした。
自分たちが時間をかけて考え、作ろうとしてきた仕組みの一部に、汎用AIの機能が予想以上の速さで近づいてきたようにも感じます。
もちろん、今回の提案がどのような情報処理によって生まれたのか、すべてが分かったわけではありません。
また、AIの指摘が具体的だからといって、そのまま正しいとは限りません。
それでも、今後のAI活用を考えるうえで、無視できない変化だと思います。
これから会社として何を開発し、何を蓄積し、何を汎用AIに任せるべきなのか。
そして、これからAIの活用を学ぶ人たちに、何を伝えていけばよいのか。
まだ答えは出ていません。
ただ、AIの進歩がこれほど速いのであれば、今の機能を前提に将来の仕組みを決めつけるわけにはいきません。
実際に使いながら、その変化を確かめ、考え方を更新していくしかないのだろうと思います。
TSVの疑問から、仕事に使うデータの渡し方を考えた。通常Chatへ戻ると、図解や会話のテンポにも違いがあった。そしてWorkを開けば、まだ依頼していない仕事が先に提案されていた。三本の記事で残した出来事は、使う道具を選ぶ話から、会社の情報をどう残し、AIとどう仕事を分けるかという話へつながりました。
私が今回持ち帰りたいのは、専用エージェントを作る意味がなくなったという結論ではありません。汎用AIに任せられる部分が変わるなら、自分たちが作る範囲も見直す。その一方で、会社の経験や判断理由、原本の所在と資料の新しさは、自分たちで確かめられる状態にしておく。
AIが先に仕事を提案するようになっても、その提案が何を根拠にしているか、今の仕事に合っているかを確認する役目は残ります。ここ数日の驚きは、会社の知識を残してきた意味と、それを人が確かめながら使う意味の両方を、改めて考える機会になりました。
これは2026年10月8日時点の利用体験の記録です。今回のWorkの提案が、最新の正式な業務データを検証した結果だったとは確認できていません。提案の生成過程や、過去のエージェント開発との関係も未確認です。