ナレッジ・社員教育

AIは使ってきた。でも、人にどう教えればいいのだろう――社内の実践から、外部のAI伴走を考え始めて見えたこと

社内で生成AIを使い、社員と一緒に試してきた経験を、外部の方々へどう伝えるか。情報環境の整理からAI活用の相談へ進むなかで、機能説明より仕事の「面倒」を一緒に見る伴走の形を考えました。実践はこれからです。

公開日
  • #AI活用
  • #社員教育
  • #DX
  • #業務改善
  • #伴走支援

DX認定を取得してから、社内では生成AIや情報共有、ナレッジ化、業務改善などを少しずつ進めてきました。最初から大きな計画があったわけではありません。文章を整理する。大量の資料から必要な情報を探す。社員教育に使う。仕事中の会話を、後から使える知識として残す。使ってみて、うまくいかなければ直す。その繰り返しでした。

最近、その経緯を以前から知っていた仕事上の関係先から、社内の情報システムやDXについて一緒に整理してほしいという話をいただきました。最初から生成AIの話だけをしていたわけではありません。情報共有、データの保管、バックアップ、アカウント管理、セキュリティ、グループウェア。会社の情報基盤そのものを整理しながら、これからどうしていくのがよいかを一緒に考えてきました。

その延長で、今度は社員の方々が実際に生成AIを使いながら、活用方法を考えていく話が出てきました。そこで初めて、自分たちでAIを使うことと、それを別の会社の人たちに伝えることは少し違うと考えるようになりました。

社内では、仕事を見ながらAIを教えていた

社内では、文章の整理、資料の検索、計算書や図面の確認、過去資料との比較、社員教育、ナレッジ化などを試してきました。うまくいったものもあれば、思ったほど使えなかったものもあります。

社員にも日常的に、こんな話をしてきました。

ここはAIに聞いてみたらいい。資料を渡すなら、何を確認したいのかを先に決めた方がいい。AIが答えたからといって、そのまま正しいとは限らない。

AIに何を渡すか。どこまで任せるか。人が確認しなければならない部分はどこか。場合によっては、AIを使わない方が早いこともあります。

振り返ると、私はそれなりにAIを教えていたようです。ただ、「AI教育」や「研修」と意識していたわけではありません。同じ会社の社員を相手に、実際の仕事を見ながら一緒に考えていただけでした。

一対一と複数人では、伝え方が変わる

社内であれば、相手の経験や担当している仕事をある程度知っています。何につまずいているのかも分かります。説明していて伝わっていないと感じたら、途中で止めて、図面を見ながら説明を変えることもできます。

複数人になると、そうはいきません。普段からChatGPTなどを使っている人もいれば、名前は知っていてもほとんど触ったことがない人もいるでしょう。私生活では使っていても、仕事では使ったことがない人もいるはずです。

若い人が多ければ、AIそのものには抵抗がなくても、仕事の経験はまだ長くないかもしれません。AIの経験と、仕事の経験は別に考える必要があります。

機能より、仕事の「面倒」から始める

生成AIの説明は、「文章を作れます」「要約できます」「メールを書けます」「表を作れます」といった機能紹介から入りたくなります。もちろん、それも必要です。ただ、それだけでは実際の仕事につながりにくいと感じています。

以前の技術ノートでも書いたように、AIの機能を知ることと、自分の仕事のどこで使えるかを見つけることは別の話です。最初から「ChatGPTで何をしたいですか」と聞くより、「仕事の中で何が面倒ですか」と聞く方がよいのかもしれません。

毎回似た文章を作っている。資料を探すのに時間がかかる。過去資料と今回の資料を見比べるのが大変。会議記録の整理や、Excelの式を調べるのが面倒。こうした具体的な作業からなら、使いどころを考えやすくなります。

ただ、経験の浅い社員には、まだ見えていない「面倒」もあります。建設コンサルタントの仕事では、経験を重ねるほど、「作る」だけでなく「探す」「比較する」「確認する」「抜けを探す」「説明の材料を整える」といった仕事が増えてきます。

たとえば、数量計算書に書かれた数字を一つずつ検算することと、そもそも必要な項目が抜けていないかを確認することは別の作業です。書いてある数字は電卓で確かめられても、最初から書かれていない項目は同じ方法では見つかりません。

図面を修正したとき、その変更は別の図面、数量、集計表、報告書のどこへ影響するのか。過去の確認内容と今回の資料は食い違っていないか。似た資料の中で今回だけ条件が違う部分はどこか。経験して初めて、その面倒さや怖さが見えてくる仕事もあります。

道路、河川、橋梁など専門分野は違っても、過去資料との比較、条件整理、資料間の整合確認、抜けの確認、元請会社が判断や説明をするための材料整理など、共通する作業は意外に多くあります。そこにもAIを使える可能性があります。

今日使えるものと、少し先の仕事を見せる

最初の説明では、二種類のデモがあってもよさそうです。

一つは、今日から使えるもの。メールの下書き、長文の要約、会議メモの整理、文章のチェック、Excelの式の検討、長い資料から必要な部分を探すことです。

もう一つは、仕事を続けると、こういうところにも使えるかもしれないという少し先のデモです。二つの資料の差分を整理する。計算書と集計表を照合する。大量の資料から今回の条件に関係する記載を探す。打合せ記録から未処理事項を抽出する。複数資料を見ながら、確認すべき論点を整理する。

最初から高度な使い方を覚える必要はありません。ただ、「ChatGPTは文章を書くためだけの道具ではない」ところまでは見せてもよいと思います。今はまだ担当していない人も、数年後に増える仕事の姿を知ることができます。AIの使い方と同時に、仕事そのものを見る機会にもなるからです。

実際の資料を使うなら、入力してよい情報の範囲を、相手先のルールや契約条件に照らして先に確認する必要もあります。

使ってみて、人と一緒に理解を確かめる

社内でも感じたことですが、AIは説明を聞くだけでは身につきません。まず触ってみる。すると「この資料も読ませられますか」「この仕事にも使えますか」といった疑問が出てきます。その疑問から説明した方が、本人の仕事と結び付きます。

使う → 疑問が出る → 一緒に考える → また使う。 教える側がすべての使い道を先に決めるより、使う本人が自分の仕事の中で「これに使えないか」と考える経験が大切なのだと思います。

一方で、AIが丁寧に説明しても、それだけで人が理解できるわけではありません。 設計条件や数量計算では特にそうです。式の意味が文章で説明されても、式と実際の構造物の形が頭の中でつながらなければ、仕事として理解したことにはなりません。AIとの会話を続けるより、人同士で図面を見ながら説明した方が早いこともあります。

AIが役に立たなかったわけではありません。途中まで考えられたからこそ、本人が「ここが分からない」と気づけたとも言えます。AIを使うほど、AIに任せる部分と人が教え、確認する部分を分ける必要があります。

研修というより、仕事を一緒に見る

今回の話も、最初から「生成AIの研修をしましょう」と始まったわけではありません。情報システムの体制、データの置き場所、バックアップ、アカウント、セキュリティ、グループウェアを整理する中で、その先にAIの活用が見えてきました。当社自身が歩いてきた順序とも似ています。

外部でAI活用を一緒に考える話が出たとき、最初は「何を教えればいいのだろう」と思いました。でも、私はAI専門の研修会社ではありません。建設コンサルタントの仕事の中でAIを使い、失敗し、社員と一緒に試してきた側です。それなら、機能を順番に説明するより、相手先の仕事を一緒に見て、どこにAIを使えるかを考える方が、自分には合っている気がします。

試したことのないものが出れば、「これは私も試したことがないので、やってみましょう」でよい。どこなら使えそうか。どこは人が判断すべきか。本当に時間が短くなったか。結果を信用してよいか。そうしたことを一緒に確かめたいと思います。

伴走の意味を、これから確かめる

伴走という言葉を、以前は少し曖昧に感じていました。今は、全部の答えを持つ人が前を歩くことではなく、同じ仕事を見ながら、使えるところと使えないところを一緒に考えることなのかもしれないと思っています。

試してうまくいかなければ理由を考える。うまくいけば別の仕事でも使えないか考える。その経験を少しずつ会社に残していく。今回の外部での取り組みはまだこれからです。実際に複数の人と使ってみれば、今考えている通りにいかないこともあるでしょう。それも記録していきたいと思います。

そして、AIを仕事で使うと、もう一つ避けて通れない問題があります。AIが参照する会社の情報を、どこに置き、どうつなげるか。 メール、資料、議事録、予定、社内のやり取り。AIに仕事の経緯まで踏まえてもらうには、情報基盤のあり方も考えなければなりません。この話は、また別の技術ノートで整理してみます。


関連記事