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預かった資料をAIに渡す前に、何を確かめるか

元請け会社から預かった資料をAIで扱えるのか。契約と仕様書を読み、国交省の生成AIに関する通知も確認しました。社内で考えた線引きと、案件ごとに残る確認事項を記録します。

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ある日、AIに仕事の下書きを頼もうとして、手が止まりました。

メールの宛先、元請け会社との契約書、見積の数字、仕事のために預かった資料。どれをAIに渡してよくて、どれは渡さないのか。会社としてAIを使う環境を用意していても、その線引きはまだ十分に整理できていませんでした。

当社は、元請け会社から条件や資料を受け取り、土木設計に関する作業や照査、資料整理などを行うことが多い会社です。預かった資料を一律にAIへ渡さないと決めれば判断は簡単になります。一方で、資料の整理、比較表の下書き、文章のたたき台など、AIが手伝えそうな仕事の多くは、その資料から始まります。

今回は、すぐに「使ってよい」と結論を出すためではなく、何を確かめれば判断できるのかを整理しました。

社内で見ることと、AIへ渡すこと

最初に考えたのは、資料を「見る」ことと「AIに渡す」ことの違いです。

社員が社内で資料を開く場合と、資料の内容を外部のAIサービスへ貼り付けたり、ファイルをアップロードしたりする場合では、情報の行き先が変わります。メールやドライブをAIに連携する場合も、接続したアカウントの権限や連携設定によって、アクセスできる範囲が広がる可能性があります。

メールの下書きを頼む場面なら、宛先や担当者の名前を最初から入力する必要があるのか考えられます。文章の型を作るだけなら、宛名は後から人が入れれば足ります。AIに渡す情報を、仕事に必要な最小限にするという考え方です。

ただ、名前を伏せれば資料全体を渡してよい、という話でもありません。図面や仕様書には、個人名がなくても、案件固有の条件や公開されていない情報が含まれます。資料の種類と中身を見て判断しなければなりません。

契約書と仕様書を読んで、残った疑問

次に、元請け会社との契約と、発注者の仕様書を確認しました。

確認した北海道建設部の測量調査設計業務等共通仕様書には、業務で知り得た秘密や提供された資料の扱い、情報流出を防ぐための管理が定められています。案件ごとの特記仕様書や元請け会社との契約で、さらに条件が付く場合もあります。

それらを読んで、秘密を守ることの重要さは確認できました。ただ、会社が契約したAIサービスへ、預かった資料を入力する行為をどう扱うかは、私が確認した条文だけでは判断できませんでした。契約書にAIという言葉がないことは、入力してよいことの根拠にはなりません。

国土交通省が公開している生成AI利活用計画書のひな形も読みました。個人情報は原則入力しないこと、入力データをサービス側の学習に使わせない措置の有無、利用履歴の保存方法、発注者との事前協議の有無などを書く欄があります。対象とするデータを記す欄もありますが、預かった資料を入力してよいかを資料の種類ごとに決めたものではありません。

一方、国交省の2026年7月29日付の依頼には、報告書や設計成果などを生成AIでまとめる場合、利用範囲を受発注者の協議で定め、計画書に記載して提出するという特記仕様書の記載例があります。これは成果に直接影響するAI利用についての手続きです。預かった資料の入力可否を、この依頼だけで一律に決めることはできません。

元請け会社へ、何を伝えるか

最初は、資料を使うたびに元請け会社へ「AIに入れてよいですか」と聞くことも考えました。ただ、相手にサービスや入力範囲を伝えず、許可だけを求めても、判断しにくいと思います。

そこで、まず当社が使うサービス、渡す情報の範囲、渡さない情報、管理方法を整理し、元請け会社へ説明できる形にしておくことにしました。案件の条件や元請け会社からの指示を確認し、制限があればそれに従います。発注者との協議や計画書の提出が必要な案件では、元請け会社を通じて必要な手続きを確認します。

ここで気をつけたいのは、運用を共有したことを、資料入力への承諾と読み替えないことです。共有した後に返事がなかったから使ってよい、とは判断できません。相手の条件を確認するためにも、何を伝え、どのような返答を受けたかは記録に残したいと思っています。

国交省の直轄業務で、報告書や設計成果にAIを使う場合は、前述の通知や、その案件の特記仕様書に従って利用範囲を協議します。北海道の案件を含め、それ以外の仕事でも、元請け会社との契約や案件ごとの条件を確認します。発注者との協議が必要なときは、元請け会社を通じて進めます。

社内で考えた線引き

当社では、全部を禁止するだけでは、社員が実際の仕事で迷う場面を解決できないと感じています。そこで、まず次の線引きを考えました。これは案件ごとの利用許可を意味するものではなく、資料を扱う前に社内で確認するための基準です。

  1. 公開資料でも、必要な部分だけを使う。 公開されている基準や設計図書は、公開版であることと利用目的を確認する。公開資料と一緒に渡された非公開の注記や、個人情報まで含めない。
  2. 預かった資料は、案件の条件から確認する。 元請け会社との契約、特記仕様書、資料の指定、元請け会社からの指示を確かめる。利用を検討する場合も、会社が契約したAIサービスに限り、業務に必要な範囲へ絞る。個人のアカウントや無料版には入力しない。
  3. 入力しない情報を決めておく。 個人情報、入札に関わる数字、発注者や元請け会社が非公開と指定した情報は入力しない。判断がつかない資料は、入力前に確認する。
  4. 契約書と見積は社内資料として扱う。 AIについての記載や秘密保持の条件を確認する。秘密にする条項が見当たらないことだけを理由に、AIへ渡してよいとは考えない。
  5. 連携の範囲も確認する。 AIにメールやドライブをつなぐなら、接続したアカウントの権限、AI側の権限、共有フォルダーの範囲を確認する。業務に関係のない個人情報が一緒にある場所は連携対象にしない。

特に5番は、ファイルを自分でアップロードしない使い方でも重要です。連携先の権限が広いと、AIに頼んだ仕事の範囲より多くの情報へアクセスできる可能性があります。連携を使う場面と、使い終えた後の設定確認も、運用に含める必要があります。

AIサービス側の設定も確かめる

会社で契約したサービスであっても、契約名だけで入力情報の扱いまで判断できません。入力内容がモデルの学習に利用されるか、どの範囲で保存されるか、管理者が利用履歴を確認できるか、接続した外部サービスにどの権限を渡しているかを、実際の契約条件と管理画面で確かめる必要があります。

原稿を書いている段階では、現在の契約と設定について、すべてを確認し終えたわけではありません。そのため「当社が使うAIには預かった資料を何でも安全に入力できる」とは書けません。設定を確認したとしても、案件の資料を渡してよいかという判断は別に残ります。

AIが作った比較表や文章も、そのまま元請け会社へ渡すことはしません。資料の読み違いや、条件の取り落としがないか、担当者が元資料に戻って確認します。AIが作業を手伝う範囲と、人が責任を持って確かめる範囲を分けておきたいと思います。

今の時点で残ること

今回、社内で考えるための線引きは作れました。ただ、個々の資料をAIへ入力してよいかは、案件ごとに確認が必要です。北海道の今後の仕様書や特記条件がどう変わるかも、今の時点では分かりません。

元請け会社に管理方法を共有したとき、どのような条件や返答があるか。AIサービスの現在の設定は、実際にどこまで確認できるか。これらも、これから確かめることとして残っています。

これまでは、AIを使える場面を増やすことを主に考えてきました。預かった資料を扱う段階になると、使う前の確認が仕事の一部になります。まずは資料と案件の条件を確認し、必要な範囲を絞り、相手に説明できる記録を残す。今回の検討は、そこから始めるためのものです。


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