AIエージェントは何で動かすのか――Codex、Claude Code、Agents SDKをどう使い分けるか
会社のAIエージェントを作るとき、Codex、Claude Code、AIモデル、Agents SDK、MCPは何を担当するのか。製品名ではなく役割で整理します。
AIと仕事を設計する|第2回
AIエージェントは何で動かすのか――Codex、Claude Code、Agents SDKをどう使い分けるか
前回は、「AIを使う会社」から「AIと仕事を設計する会社」へ、という話を書きました。
では実際に、会社の中でAIに役割を持たせて仕事をさせるには、何を使えばよいのでしょうか。
最初に思い浮かぶのは、CodexやClaude Codeかもしれません。
私自身、AIを使ったプログラム開発や業務ツールの試作では、こうしたコーディングAIを利用しています。
しかし、AIエージェントについて調べていくと、少し整理が必要だと分かりました。
CodexやClaude Codeと、「会社の中で動くAIエージェント」は、重なる部分もありますが、同じ意味ではありません。
CodexやClaude Codeは非常に強力である
CodexやClaude Codeは、単にコードを提案するだけのAIではありません。
ファイルを読み、既存コードを理解し、複数のファイルを修正し、プログラムを実行しながら問題を解決できます。
以前であれば、プログラミングの知識がなければ作れなかったような社内ツールも、自然言語で相談しながら試作できるようになりました。
私自身も、この方法で自社用のツールや仕組みを作ることが増えました。
しかし、
Codexを起動しておけば、それが会社のAI社員になる。
という話ではありません。
一方で、「CodexやClaude Codeは開発にしか使えない」と分けるのも正確ではありません。
Codexには、社内ツールや独自アプリからプログラムとして利用するSDKがあります。より大きなAIシステムの中で、コードやファイル処理を担当する専門エージェントとして動かす方法も示されています。
Claude Codeも、対話画面だけでなく、非対話実行やSDK、MCPを利用した組み込みができます。
参考:OpenAI「Codex SDK」、Anthropic「Claude Code CLI reference」
製品名ではなく、役割で分けて考える
例えば会社に、次のようなAIを置きたいとします。
- 過去事例を探すAI
- 技術基準を探すAI
- 数量を確認するAI
- 図面を確認するAI
- それらの結果をまとめるAI
これらを毎回CodexやClaude Codeの画面から個別に操作するだけでは、社員が共通して使う業務システムにはしにくいと思います。
社員が通常のWeb画面から相談すると、裏側で必要なAIや道具が選ばれて動く方が利用しやすくなります。
その仕組みをCodexやClaude Codeと一緒に開発することもできます。完成した仕組みの中で、CodexやClaude Code自身を専門担当として動かすこともできます。
したがって、「作る側」と「働く側」を製品名で完全に分けるのではなく、役割で考える方が分かりやすいと思います。
AIモデル
=考えるための頭脳
Agent
=役割、指示、道具を持って仕事を進める担当者
Codex/Claude Code
=コード、ファイル、プログラム実行を扱うことに強いAgent環境
Agents SDK
=Agent、道具、状態、引き継ぎ、人間の承認などを組み合わせる仕組み
MCP/API
=社内データや外部ツールへ接続する方法
Webアプリ
=社員が利用する入口
重要なのは、
どのAIに、どの仕事を、どの権限で担当させるのか。
を会社側で設計することです。
AIエージェントの骨格を作るAgents SDK
OpenAIには「Agents SDK」という開発用の仕組みがあります。
これは、AIエージェントを構成する選択肢の一つです。
例えば、
「あなたは過去の技術記録を検索する担当です」
という役割を持ったAIへ、社内ナレッジを検索する道具を与えます。
別のAIには、
「あなたは数量を確認する担当です」
という役割と、計算処理を実行する道具を与えます。
さらに、それらの結果をまとめるAIを用意できます。
Manager AI
│
┌────────────┼────────────┐
│ │ │
Knowledge AI Quantity AI Drawing AI
│ │ │
社内記録検索 計算処理 図面確認
Agents SDKでは、Agent間の引き継ぎ、利用できる道具、人間による承認、実行状態、処理履歴などをプログラムとして構成できます。
ただし、Agents SDK自体が考えるわけではありません。会社のデータや業務機能を自動的に用意してくれるわけでもありません。
AIモデル、役割、道具、データ、権限、確認方法を組み合わせて、初めて会社の仕事を進められる仕組みになります。
AIに道具を持たせる
AIエージェントの面白さは、文章を生成するだけでなく、外部の道具を使えることです。
概念的には、例えば次のような機能を用意します。
search_knowledge()
check_quantity()
search_standard()
create_report_draft()
将来的には、
create_cad_script()
のような機能も考えられます。
AIそのものに、すべての能力を持たせるわけではありません。
会社にあるデータやプログラムを、AIが必要に応じて呼び出す。
この考え方は、通常のチャットAIへ質問するだけの使い方とは少し違います。
MCPという共通の接続方法
ここで出てくるのがMCPです。
MCPは、AIを利用するアプリケーションと、外部のデータや道具を接続するための共通的な仕組みです。
例えば、自社専用の機能として、
- ナレッジ検索
- 案件情報取得
- 数量チェック
- CAD用スクリプト生成
などを用意しておけば、MCPに対応する複数のAI環境から再利用できる可能性があります。
これは会社側にとって重要です。
会社固有のデータや道具をAIモデルから分けておけば、特定サービスへの依存を小さくし、接続部分を再利用しやすくなる可能性があります。
ただし、MCPを採用すれば、どのAIにもそのまま交換できるわけではありません。
認証、閲覧権限、データ形式、実行環境、利用するAI側の対応状況は別に設計する必要があります。
参考:Model Context Protocol「Introduction」
社員が使う入口は普通のWeb画面でよい
ここまで書くと、大掛かりなシステムに見えます。
しかし、社員側が見るものは複雑である必要はありません。
案件名:
相談内容:
[AIに確認]
これだけでも構いません。
裏側では、
社員
↓
Webアプリ
↓
Manager Agent
↓
必要な社内情報を検索
↓
必要な専門処理を実行
↓
社員へ比較材料を提示
と動きます。
社員がAgents SDKやMCPを意識する必要はありません。普段の業務ツールと同じように使えればよいと思います。
一方、実際の運用では、社員ごとの認証、案件ごとの閲覧権限、操作履歴、人間による承認も必要になります。
AIが動く仕組みだけでなく、会社で安全に使う仕組みまで含めて設計しなければなりません。
最初から複数のAIを作る必要はない
AIエージェントという言葉を聞くと、たくさんのAIが自律的に会話しながら働く姿を想像します。
しかし、最初からそこまで作る必要はないと思っています。
まず一つのAIに、
- 相談内容を整理する
- 必要な社内情報を探す
- 注意点をまとめる
- 人間が判断すべき部分を示す
という仕事をさせます。
その一つが本当に役立つことを確認した後で、数量担当、図面担当、技術基準担当と分けていけばよい。
システムを複雑にすることが目的ではありません。
実際の仕事が少し良くなることが目的です。
会社にとって本当に重要なのは、最新のAIモデルそのものではないのかもしれません。
自社の知識と、自社の仕事を、AIが利用できる形にしておくこと。
次は、この「自社の知識」について考えてみます。
AI社員を作る前に、なぜ会社の記憶が必要なのか。実際に社内ナレッジを作ってきた経験から整理します。
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