3Dは、図面を読める人が作るものだと思っていた――若手教育で少し考えが変わった話
複雑な構造物を若手社員が1日半かけて3Dモデル化しました。その姿を見て、3Dは図面を読める人の道具ではなく、2D図面を読む力や理解度を確かめる教材にもなるのではないかと考えた記録です。
前回の記事で、複雑な数量計算を理解しようとして、社員がGPTを使った話を書きました。
AIは計算式の意味をかなり丁寧に説明していました。それでも、本人の中では、
その式が、図面のどこの形を表しているのか。
までつながりませんでした。
最終的には、平面図、側面図、断面図を見ながら、人間同士で指を差し、簡単な絵を描きながら説明することになりました。
今回の記事は、その続きです。
同じ構造物を、別の社員に3Dモデル化してもらいました。
そこで、私自身が今まで持っていた若手教育の考え方を、少し見直した方がよいのかもしれないと思う出来事がありました。
図面を読めるようになれば、数量は拾えると思っていた
これまで私は、まず2次元の図面をしっかり読む。平面図、側面図、断面図を見比べ、頭の中で立体を組み立てる。その形が理解できれば、数量も拾えるようになる。
基本的には、そう考えてきました。
実際、若手には何度も、
平面だけを見るな。
断面と見比べて。
この線が、側面ではどこに出てくるか考えて。
と教えてきました。
形が分からないときには、紙にポンチ絵を描く。もっと難しいときには、簡単な模型まで作る。
以前、今回3Dモデルを作った社員にも、手元にあった小さな紙箱を模型代わりにして、形を説明したことがあります。
当時は、それくらい立体を理解するのに苦労していました。
だから私の中では、
図面を理解できるようになった結果として、3Dモデルも作れるようになる。
そんな順番だったのだと思います。
同じ形を、別の社員に3Dにしてもらった
ここ最近、その社員にはBIM/CIMを含め、3Dをかなり勉強してもらっています。
今回も、その延長で、
この形も3Dにしてみて。
とお願いしました。
前回の記事で別の社員が理解に苦労していた、同じ構造物です。
単純な直方体ではありません。テーパーがあり、平面的にも断面的にも斜めになっています。複数の断面を見ながら、どこからどこまで形が変化しているのかを理解しなければ、なかなか立体が見えてきません。
3Dモデル化をお願いした社員も、簡単に作れたわけではありません。
1日半ほどかけて、かなり試行錯誤していました。
作っては違う。図面へ戻る。別の作り方を試す。また図面を見る。
そんなことを繰り返して、最終的には形として成立するところまで持ってきました。
3Dを作ろうとしてきたから、図面を読む力が深くなったのかもしれない
完成したモデルを見ながら、私は少し不思議な感覚になりました。
前回、別の社員は、この形そのものを理解するところでかなり苦労していました。ところが今回は、同じようにまだ経験年数の浅い社員が、時間はかかっても、自分で形を組み上げています。
単純に、
こちらの社員の方が、図面を読むのが得意だったのか。
最初はそう考えました。
でも、少し違うのではないかと思い始めました。
今回モデルを作った社員は、ここ最近、かなり3Dに触れています。過去にも、胸壁やゲート室など、2次元図面だけでは分かりにくい形を3D化してきました。
もしかすると、
2D図面を読めるようになったから3Dモデルを作れるようになったのではなく、3Dモデルを作ろうとしてきたから、2D図面を読む力が深くなったのではないか。
そんな可能性を感じました。
3Dを作ろうとすると、曖昧なままでは進めない
2次元図面を眺めるだけなら、何となく分かった気になることがあります。
平面図は見た。側面図も見た。断面図も見た。それぞれの絵は理解したつもりになる。
でも、その三つが本当に頭の中で一つの立体につながっているかは、外からは分かりにくいものです。
ところが3Dモデルを作ろうとすると、曖昧なままでは進めません。
この線はどの面なのか。この断面はどの位置なのか。この斜め面はどこから始まり、どこで終わるのか。平面図ではこう見えているのに、側面ではなぜこの形になるのか。
そこを理解できなければ、モデルとして成立しません。
間違って作れば、正面から見たときは合っていても、側面から見るとおかしい。側面が合っていても、断面を切ると違う。
そのたびに、また2次元図面へ戻ることになります。
つまり、3Dモデルを作る作業そのものが、平面、側面、断面を何度も往復させる訓練になっているのかもしれません。
完成した3Dを見るだけではなく、「作る」ことに意味があるのかもしれない
もちろん、完成した3Dモデルを見るだけでも分かりやすくなります。
斜めから見れば、
この面と、この面が、ここでつながっている。
ということが一目で分かります。複数の断面図を頭の中でつなぐ必要も少なくなり、説明する側にとっても非常に楽です。
ただ、今回感じたのは、その一歩先です。
完成した3Dを見ることとは別に、自分で3Dを作ろうとする過程そのものにも、大きな教育効果があるのではないか。
作るためには、元の2次元図面を読まなければなりません。分からなければ、また図面へ戻る。別の方向から見る。寸法を確認する。断面位置を確認する。
その繰り返しの中で、図面を見る視点そのものが増えていく。
もしかすると、ここに今まで私が十分に意識していなかった教育効果があるのかもしれません。
効率では遠回りでも、教育では意味が変わる
もちろん、効率だけを考えれば遠回りです。
今回のモデルも、作るだけで1日半ほどかかっています。本来の数量計算だけなら、それだけの時間を掛けるようなボリュームではありません。
だから、
これからは、数量を拾う前に全部3Dモデルを作ろう。
という話ではありません。それでは仕事として成立しません。
ただし、教育として考えると話が変わります。
若手がどうしても理解できない形。複数の断面が一枚の図面に表現されているところ。テーパーや斜め面が複雑につながるところ。平面、側面、断面を何度見ても頭の中でつながらないところ。
そういう部分だけでも、自分で簡単な3Dを作ってみる。
成果品レベルのCIMモデルである必要はありません。寸法や属性を完璧に入れる必要もない。
目的はモデルを納品することではなく、図面を理解することだからです。
ここは、私自身の指導方法を少し考え直しているところでもあります。
今までは、
分からなければ、図面をもう一度見て。
平面と断面を比べて。
頭の中で立体にして。
と教えてきました。もちろん、それ自体は今でも間違っていないと思います。
ただ、その方法でなかなか立体が浮かばない人に対して、さらに図面を何度も読ませ続けるだけでよいのか。
今回の経験を見ると、実際に3Dモデルを作らせることで、違う角度から図面を理解できる可能性があるように感じています。
本人が理解できているかどうかも、モデルを見ればある程度分かります。
平面は合っている。でも側面が違う。断面位置を取り違えている。斜め面のつながりがおかしい。
頭の中だけでは見えない理解不足が、モデルとして外に出てきます。
これは指導する側にとっても大きい。
3Dモデルは、単に形を見やすくするための道具ではなく、理解度を確認するための道具にもなり得るのかもしれません。
3Dは、できる人が使うものではないのかもしれない
前回、数量計算で苦労していた社員にも、今後少し3Dを触ってもらおうと考えています。
今回のような複雑な形を、いきなり全部作らせる必要はありません。まずは簡単なものから始め、徐々に、平面と断面の対応、斜め面、テーパー、断面が変化する形を自分で立体にしてもらう。
それによって図面の読み方や数量の理解がどう変わるのかは、まだ分かりません。
今回一人を見ただけで、
3D教育をすれば、図面が読めるようになる。
と断定するつもりもありません。ただ、試してみる価値はありそうです。
これまでは、図面を理解できる人が3Dを作る。そんな感覚を持っていました。
でも今回、その順番は一方向ではないのかもしれないと思い始めました。
3Dモデルを作ることで、2D図面を読む力が育つ。
そうなれば3Dは、BIM/CIMや成果物を作るためだけではなく、若手が図面を理解するための教材としても使えるかもしれません。
以前は、手元にあるものを模型代わりにして説明していました。今は、その模型を画面の中で本人に作らせることができます。
効率だけを見れば遠回りです。でも教育まで含めて考えれば、その遠回りに意味があるのかもしれません。
今回の3Dモデルを見ながら、私は少し、これまでの教え方を考え直しています。