セキュリティ・認定

BCPのためにクラウド化したわけではない。でも、実際に試したら事業継続力になっていた

NASのバックアップから始めたクラウド化を、通常PCと社内LANを使わない平時訓練で確認しました。約5分で業務データを開けた一方、CADや解析環境の復旧は未確認。できたことと残る課題を記録します。

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最近、BCPに関する案内メールが届きました。

それを見て、2026年2月27日付で認定を受けた事業継続力強化計画の平時訓練を、そろそろ実際にやってみなければと思いました。

普段使っていないPCを用意し、会社のWi-Fiを切る。

スマートフォンのテザリングだけでインターネットへ接続し、社員本人の会社アカウントでログインする。

約5分後、Google Driveの業務フォルダを開き、実際のファイルまで確認できました。

2026年9月、Creerで行った事業継続力強化計画の平時訓練です。

もちろん、これは「5分で仕事が完全復旧した」という話ではありません。

CADも構造計算ソフトも解析環境も復旧していません。

それでも、会社の通常PCや社内LANが使えない状態で、社員本人が会社の業務データへ再び到達できた。

実際にやってみたことで、計画書に書いていた「事業継続」が少し具体的なものになりました。

Google Workspaceを入れた最初の理由は、BCPではなかった

Google Workspaceを入れた最初の理由は、かなり単純でした。

NASにしかない業務データを、会社の外にも持たせたかったからです。

当時の私の中では、まずバックアップの問題が大きくありました。

会社の中にあるNASだけにデータを置くのではなく、クラウドにも持たせたい。その候補としてGoogle Workspaceを選び、Google Driveを使い始めました。

Google Chatで社員と連絡できる。会社の外からDriveへアクセスできる。ノートPCを持ち出せば、社外でも会社の資料を使える。

ほぼ同じ時期にDX認定や事業継続力強化計画について考えるようになり、日常の連絡や資料共有に使うこの環境を、非常時にも利用できないかと考えました。

最初からBCPのためにクラウド化したわけではありません。

バックアップのために使い始めたGoogle Driveが、社外から資料を確認する手段になりました。Google Chatは、社員との日常的な連絡手段になりました。そうして普段の仕事で使ううちに、DX認定に向けた業務改善や、非常時の事業継続とも少しずつつながっていきました。

一つの目的で導入した仕組みが、実際に使い続ける中で、別の意味を持つようになったのだと思います。

「会社のLANがない」前提で試してみた

Creerは2026年2月27日付で事業継続力強化計画の認定を受けています。認定番号と認定日は、既存サイトの認定・宣言・取り組みで確認できます。

計画には、社員の安否確認や、Google Workspace等を利用した連絡、リモート環境からの接続確認などを盛り込んでいました。

そして9月、平時訓練を行う時期になりました。

そこで改めて考えたのが、

本当に会社の通常環境が使えなくなっても、会社の情報へ戻れるのか

ということです。

今回の訓練では、普段使っていないPCを、災害後に確保した代替PCに見立てました。

会社の通常Wi-Fiは使いません。

スマートフォンのテザリングだけで接続し、社員本人の会社アカウントでログイン。2段階認証を行い、Google Driveへ入りました。

確認したかったのは、クラウドにファイルが置いてあるかだけではなく、社員本人が代替環境から認証を通り、必要なファイルを開けるかという一連の手順です。

今回の条件では、そこまで進められました。ただし、携帯回線やクラウドサービスまで使えない場合を試したものではなく、どの災害でも同じように接続できると確認したわけではありません。

まず仕事より、社員の安全を確認する

大きな災害が起きた直後に、いきなりCADを開くわけではありません。

まず確認するのは社員の安否です。

誰と連絡が取れるのか。社員は安全なのか。会社や周辺はどうなっているのか。

そこが最初です。

事業継続という言葉だけを見ると、「いかに早く仕事を再開するか」という方向へ考えがちですが、その前に人の安全があります。

そのうえで、顧客へ何を伝えるか、進行中の案件にどんな影響があるか、何を優先して確認するか、誰が何をできるのかを整理していきます。

業務継続は、電源を入れれば元通りになるような話ではありません。

安否確認から始まり、できる仕事を少しずつ戻していく。

実際の災害を考えると、その方が現実的だと思います。

CADが使えなくても、仕事がすべて止まるわけではない

Creerは土木設計会社です。

CAD、Excel、構造計算、数値解析、専用ソフトなど、PC環境へ依存する仕事は少なくありません。

スマートフォン一台で、すべての設計業務ができるとは考えていません。

ただ、それでも仕事が完全にゼロになるわけではありません。

顧客への連絡内容を整理する。

今分かっている情報を並べる。

案件ごとに次に何を確認するか考える。

社員への指示事項を整理する。

技術的な論点をAIと壁打ちする。

私は、こういった作業も仕事の一部だと考えています。

最近はChatGPT Businessも全社員で使い始めました

CADや専用ソフトが使えない状況でも、スマートフォンや一般的なPCから、考える、整理する、確認する、伝えるといった仕事の一部は続けられます。

AIも、その途中を支える一つの道具になり得ます。

そこで今は、事業復旧を一段階で考えるのではなく、

安否確認・連絡の確保

スマートフォン等を使った初動対応

代替PCとクラウドを使った暫定復旧

CADや解析環境まで含めた本格復旧

という段階で考えた方がよいと思っています。

一気に元通りを目指すのではなく、今できる仕事をつないでいくという考え方です。

実は、似たことは普段からやっていた

今回の訓練をしてから振り返ると、全く初めてのことでもありませんでした。

大雪などで出社が難しいとき、社員が自宅に置いてある会社ノートPCから在宅勤務したことがあります。

私自身も、会社のノートPCを社外へ持ち出し、Google Driveの資料を使って打ち合わせをしています。

外出中にスマートフォンからDriveへ入り、資料を確認しながらGoogle Chatで技術相談を続けたこともあります。

必要な作業のため、認証したうえで別拠点のPCからCreerのクラウドへアクセスし、データを受け渡したこともありました。

つまり今回初めて「クラウドなら会社の外でも仕事ができる」と知ったわけではありません。

普段から部分的にはやっていたことを、

災害時を想定した条件でも本当に使えるか

改めて確認したのが今回の訓練でした。

非常時だけ使う特別な仕組みより、普段から使っている仕組みの方が、いざという時にも使いやすい。

その意味も改めて感じました。

代替環境から入れることと、安全に使えること

「どこからでもアクセスできる」と「誰でもアクセスできる」は、全く違います。

災害時には、普段とは違うPCや通信回線を使う可能性もあります。

だからこそ、会社アカウントによる認証、2段階認証、アクセス権限、端末の扱いなどを、平時から整えておく必要があります。

以前この技術ノートでも、要求される前に、SCS★3を目指してみようと思うと書きました。

非常時に使える手段を増やすことと、会社の情報を扱える人や端末を管理すること。その両方を考えなければ、安心して使える代替環境にはならないと思います。

DX・クラウド・AI・BCP・セキュリティは別々ではなかった

今回の訓練までを振り返ると、別々に進めてきたように見えた取り組みが、実際には一本の線でつながっていました。

  • クラウドは、データを一つの物理拠点から切り離す
  • AIは、考える、整理する、伝えるといった仕事を続ける手段を増やす
  • BCPは、一つの場所や端末に依存しすぎないようにする
  • セキュリティは、それらを安全に使うための条件を整える

どれか一つを導入すれば事業継続が完成するわけではありません。

バックアップのために始めたクラウド、日常の業務改善として使い始めたAI、認定をきっかけに整理したBCP、利用範囲が広がる中で考えてきたセキュリティ。それぞれを組み合わせることで、通常の環境が使えないときにも、できる仕事を少しずつつなぐための土台になっていました。

一か所にしかないものを減らしていく

データに接続できた後で、もし作業の経緯や注意点が担当者の頭の中にしかなければ、別の人が引き継ぐのは難しいかもしれません。

Creerで残している技術指導の音声や、社員自身の仕事のメモも、その面では役立つ可能性があります。今回そこまで訓練で確かめたわけではありませんが、ファイルへアクセスする手段と、仕事を引き継ぐための記録は、どちらも必要だと感じました。

今回の検証から見えてきた共通点は、一か所にしかないものを減らしていくことです。

  • データを一つの物理拠点だけに置かない
  • 判断を一人の頭だけに置かない
  • 仕事の手段を一つの端末だけに依存させない
  • 連絡手段も一つに依存しない

ただし、「一か所にしかないものを減らす」とは、内容の違う最新版をあちこちに作ることではありません。どれを正本として扱うかを決めることと、そのデータを失わず、必要な人が参照できるようにすることは分けて考えたいと思います。

認定を取っただけでは分からなかった

事業継続力強化計画の申請書には、クラウドを使った事業継続について書いていました。

でも、書いてあることと、実際に社員ができることは同じではありません。

今回、会社の通常LANを使わず、別のPCと携帯電話回線だけでDriveへ入り、実際の業務データを開くところまで試したことで、初めて確認できたことがありました。

一方で、CADや解析環境まで含めた本格復旧については、まだ考える余地があります。

セキュリティも含めて、今後さらに詰めなければならない部分があります。

バックアップのために始めた環境で、社員が代替PCから業務データを開けた。今回の成果は、まずそこです。

次は、そのデータを使ってどの仕事まで再開できるのか。専用ソフトや作業環境をどう戻すのか。今回確認できた範囲を出発点に、次の訓練で確かめることを考えていきたいと思います。


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